おつかれヤマです、マッシュです。
この記事ではグリベルG12ニュークラシックの特徴や使用感を詳しくレビューします。
G12ニュークラシックは、ストラップで固定するタイプなのでコバのない登山靴にも装着可能。
コバ付きの雪山用登山靴を持っていなくても、このストラップ式アイゼンで十分に雪山登山が可能です。
ストラップ式は装着が簡単で雪山初心者にも問題なく扱えますが、グリップ力は他の12本爪アイゼンとまったく変わりません。
雪山初心者から上級者まで、幅広い登山者に適しており、雪山登山のあらゆるシーンで活用できるアイテムです。
G12ニュークラシックを雪山で使ってきた僕が、実際に使用して感じたことをこの記事でまとめました。
グリベルG12ニュークラシックが気になる方はぜひ参考にしてください。
グリベル(Grivel)とは?
グリベル(Grivel)は、1818年にイタリアで創業した歴史ある登山用具メーカーです。
特にアイゼンやピッケルといった冬山登山の必須アイテムで知られ、アルピニズムの進化に大きく貢献してきました。
グリベルの製品は、高い技術力と耐久性を特徴としており、アイゼンの軽量化やカーボンファイバー素材のピッケルの開発など、革新的な取り組みを続けています。
初心者からプロフェッショナルまで幅広い層の登山者に支持されており、世界中の登山愛好家から信頼されているメーカーです。
グリベルアイゼンの種類
グリベルのアイゼンは、爪の本数や形状によって主にGシリーズとエアーテックシリーズの2種類のラインナップがあります。
また、登山靴への固定方法の違いでニュークラシック、ニューマチック、オーマチックの3種類があります。
爪の形状や本数の違い
Gシリーズ
初心者からプロまで対応する多用途モデルで、あらゆるタイプの登山に適した、非常に耐久性の高いアイゼン。
爪が長く、急斜面でもしっかりとした登攀力を発揮。
素材には、ニッケルクロムモリブデン鋼を使用している。
G10:初心者や軽量装備を重視する登山者向けの10本爪アイゼン。
G12:オールラウンドに使える12本爪アイゼンで、雪山からアルパインルートまで幅広く対応。
G14:技術的な登攀向けにフロントポイントを交換可能なデザインにした12本爪アイゼン。
エアーテックシリーズ
岩や氷が多いミックスルートに適したアイゼン。
短めの爪と軽量かつコンパクトなデザインで歩きやすさを追求した爪の設計が魅力。
素材には、ニッケルクロムモリブデン鋼のほか、アルミニウムを使用した軽量モデルもある。
バインディングシステム(靴への固定方法)の違い
ニュークラシック
ストラップ式バインディングで、あらゆる登山靴に固定できる汎用性の高いモデルで、最も多くの登山者が使用しているタイプです。
つま先とカカトにあるプラスチック製のハーネスにストラップを通して装着。
ニューマチック・オーマチックに比べると靴との固定感が低く、装着に手間がかかるのが弱点。
ニューマチック
セミワンタッチ式で、つま先部分はストラップをハーネスに通し、カカトはレバーで固定するタイプ。
ニュークラシックに比べると装着がしやすいが、カカト部分にコバと呼ばれる凹みがある登山靴のみに装着可能。
安定性と装着のしやすさを両立し、雪山やアルパイン向けのタイプです。
オーマチック
前後にレバーがあるワンタッチ式で、つま先とカカトにコバがある冬用の登山靴専用タイプ。
素早い装着と高い固定力で、難易度の高い上級者向けの雪山に適しています。
12本爪アイゼンは急斜面や凍結した登山道で威力を発揮する
12本爪アイゼンは雪山上級者だけが使うものではなく、むしろ、雪山初心者が安全に登山するためにも装備して欲しいアイテムです。
アイゼンにはさまざまな種類がありますが、本章では軽アイゼン・チェーンスパイクや10本爪アイゼンとの比較について説明します。
軽アイゼンやチェーンスパイクは急斜面が苦手
軽アイゼンやチェーンアイゼンは軽さが強みですが、爪が短いため急斜面やトラバースなどでは安定した歩行が難しいのが弱点。
雪山登山で使用すると性能不足を感じることがあります。
軽アイゼンやチェーンアイゼンの使用が適しているのは、積雪の浅い緩やかな坂道や凍結が限定的な登山道。
本格的な雪山では、雪や氷にしっかりグリップしてくれる12本爪アイゼンが最適な選択肢です。
標高2,000m以上の雪山登山なら10本爪より12本爪の方がおすすめ
10本爪アイゼンと12本爪アイゼンはパッと見似ていますが、雪山登山をするならやはり12本爪アイゼンがおすすめ。
10本爪アイゼンは前部の爪が2本少なく、爪の長さもやや短めで、爪の先端も少し滑らかです。
雪や氷の上でのグリップ力、急斜面やトラバースでの安定性を考えるとやはり12本爪アイゼンの方が適しています。
グリベルG12ニュークラシックの紹介(スペックと外観)
グリベルG12ニュークラシックは、12本爪(前8本+後ろ4本)のアイゼンで、初心者から経験者まで幅広く支持されています。
固定方法はストラップ式バインディングで、さまざまな登山靴に対応。
あらゆる状況でも安定的にパフォーマンスを発揮するオールラウンドかつ耐久性に優れた道具で、まさに「アイゼンの王様」です。
全体の外観
長いストラップが飛び出ている方が足の外側になります。
重量は1,010g
重量の実寸は1,010g。
約1kgの重さが足に付いているので、歩いているとその重さが身に沁みます。
グリベル公式HPの重量は964gですが、実寸はやや重いです。
公式の重量はストラップが含まれていないのかもしれません。
爪の素材はニッケルクロムモリブデン鋼
G12ニュークラシックの素材はニッケルクロムモリブデン鋼と呼ばれる素材で、略称は「クロモリ鋼」です。
ニッケルクロムモリブデン鋼は、鉄を主成分とし、ニッケル、クロム、モリブデンを加えた合金鋼です。
合金鋼にすることで耐食性、強度、耐摩耗性などの特性を備え、雪山での過酷な条件下にも耐えることができます。
登山道具の他にも、航空宇宙、建設、工具など、耐久性が求められる分野で使用されています。
前8本は長く鋭い、後ろ4本は短めでノコギリ形状
G12ニュークラシックは12本の爪(前8本、後ろ4本)がありますが、それぞれの爪は別々の役割を持っています。
前に飛び出ている2本は、前方向への駆動力を確保し、急斜面で蹴り込んだときの安定性を確保。
左右の6本は、トラバースや横方向の動きで雪や氷を捉えることで足の滑りを防ぎ、斜面でのバランスを向上させます。
後ろ4本は、下りや平坦な雪面での安定性の向上のほか、カカト部分しか接地できない狭い場所での歩行をアシストしてくれます。
バインディングシステム(プラスチックハーネス)
ハーネスは柔軟性のあるプラスチック製で、どの登山靴に取り付けてもしっかり固定できます。
プロアクティブアンチボット(アンチスノープレート)
グリベルではアンチスノープレートのことをプロアクティブアンチボットと呼んでいます。
プロアクティブアンチボットとは、アイゼン底面の柔らかく膨らみのある部分のこと。
この膨らみのおかげでアイゼン底面に雪が付着しにくくなっています。
ジョイントプレート
前後の爪部分を繋いでいるのがジョイントプレートです。
山で使う前に自分の登山靴にピッタリ合うように調整します。
ストラップとバックル
登山靴にアイゼンを固定する際に使います。
購入した状態だと非常に長いので、自分の登山靴に合わせて切って長さを調整します。
グリベルG12ニュークラシックのレビュー
2020年12月に使用開始、耐久性は問題なし
僕は2020年12月に購入、雪山登山で何回も使用してきました。
爪部分は表面塗装が剥げてますが、使用に支障となる損傷は全くありません。
安物のプラスチック素材だと経年で割れや変形が見られることがありますが、バインディング部分にそれらの劣化はなし。
ストラップとバックルも、汚れはありますがほつれや破れはありません。
購入後、数年経過していますが、まだまだ長く使っていけそうです。
登り・下り・トラバース、あらゆる場面でグリップ力が半端ない
グリベルG12ニュークラシックの最大の売りはそのグリップ力です。
1列目と2列目の長い爪は前に飛び出していて登る際の推進力をアシスト。
ギザギザの後部の爪は氷や岩の上でもしっかり止まるブレーキの役割を果たしています。
足を置くスペースが狭い場面でもしっかり止まってくれるので、安心して次の一歩を踏み出せます。
G12ニュークラシックの爪はさまざまな形状や角度をしていますが、これも先人たちの知見がたっぷり詰まったもの。
雪や氷の上を歩いているのにピタッと止まる不思議な感覚はアイゼンを付けて歩く醍醐味のひとつです。
ストラップ式でもハーネスが靴にしっかりフィットして不安感はない
ストラップ式のアイゼンは、どの登山靴にも装着できる反面、フィット感が弱いのがデメリットと言われています。
しかし、実際に雪山で使用してみても緩い感じはまったくなく、正しく装着すれば強いフィット感を得られます。
トラバースするときでも、横方向へ緩む感じは今まで感じたことはないです。
装着の簡単さで言えばワンタッチ式の方が上ですが、フィット感に関しての不満はないという今まで感じたことはありません。
プロアクティブアンチボットのおかげで雪の付着が非常に少ない
プロアクティブアンチボットとは、アイゼン底面に雪が付着することを防ぐ機能です。
この機能のおかげで、アイゼンの底面に団子上の雪が付着したことはありません。
雪の付着を防止する機能は、各メーカーのアイゼンに備わっていますが、グリベルのプロアクティブアンチボットは、その中でも特に優れたものだと思います。
スボンの裾を引き裂いたことは一度もない
アイゼンを装着していると爪でズボンの裾を引き裂くリスクがありますが、普通に歩いていれば引き裂くことはほとんどありません。
引き裂いてしまう場面として想定されるのは、バランスを崩したり、つまづいたとき。
また、急な斜面や足場の狭い登山道はリスクが高まります。
ついついスピードが出てしまう下山字も注意が必要です。
アイゼン装着時は左右の足幅を少し広めに歩くのがコツ。
もし心配であれば、耐久性の高いアイゼンガードが付いているゲイター(スパッツ)を装着すれば安心です。
ストラップ式だと壊れる心配が少ない
フィット感と装着のしやすさはワンタッチ式が優れていますが、ストラップ式は仕組みがシンプルなので壊れるポイントが少ないです。
ワンタッチ式は固定のためのレバーがあるので、機械的な故障のリスクがあります。
ストラップ式の経年劣化は主にベルト部分で、交換は比較的簡単です。
12本爪アイゼンはサイズが大きいので収納方法は要検討
12本爪アイゼンはサイズが大きくて重い上に鋭い爪があるので収納方法に困ります。
軽アイゼンと比較してみると、その大きさは一目瞭然。
12本爪アイゼンの収納方法は主に以下の3つ。
専用ケースに入れて、リュックのメインコンパートメントへ収納
グリベルアイゼン用の専用ケースに入れればピッタリ収納できます。
デメリットはサイズがさらに大きくなってしまい、アイゼン使ってるときでもリュックの場所を取ることです。
リュックのフロントポケットに収納
フロントポケットが大きくて生地が丈夫なリュックなら収納可能。
生地が薄いリュックだとアイゼンの爪が刺さって引き裂くリスクがあります。
アルパイン用リュックならフロントポケットに収納できるものが多いです。
僕が持ってるカリマーリッジ30でも収納できました。
リュックのサイドポケットに収納
アイゼンを片方ずつ左右のサイドポケットに収納できます。
ある程度の広さがあるサイトポケットでないと入りません。
カリマーリッジ30はこの収納方法も可能です。
グローブしたままだとストラップ操作がやりづらい
グローブをしたままではバックルにストラップを通す作業がやりづらいと感じました。
中厚グローブでも操作しづらいので、アルパイングローブのような極厚グローブだとなおさらできません。
山の中でスムーズに対応するため、事前練習や余分なストラップの切断をしておきたいところです。
グリベルG12ニュークラシックを山で使う前の準備
本章では、使用前に自宅でしておくべきジョイントプレート調整とストラップの末端処理について説明します。
ジョイントプレート調整
ジョイントプレートの穴の数だけ、長さ調整が可能です。
かかと側のスチールプレートを持ち上げることで、ジョイントプレートを前後に動かせるので、ちょうどいい穴を選んで長さを調整できます。
ストラップの長さ調整
靴を履いてアイゼンを装着した状態で約10〜15cmのストラップを残して余った部分を切り捨てます。
切断面をライターの火で溶かしておけばほつれてきません。
購入時のストラップは非常に長いので、山での装着時に邪魔にならないように事前に調整しておきましょう。
グリベルG12ニュークラシックの取り付け・取り外しの方法
取り付け方法
靴底の雪や土を取り除き、バックル(丸環)が付いている方が外側になるように靴をアイゼンに入れます。
ストラップをつま先側ハーネスに通します。
かかと側プラスチックハーネスの内側に通します。
ストラップをバックル(丸環)に通して固定します。
ストラップの締め具合は、きつ過ぎず・ゆる過ぎずくらいで調整。
これは個人差があるので使いながら探ってみましょう。
ストラップの末端を整理します。
事前に余分を切っておけばこの末端整理も簡単です。
取り外し方法
バックル(丸環)に付いているプルタブを引っ張ればストラップが緩みます。
グリベルG12ニュークラシック使用後のメンテナンス方法
メンテナンスについて解説します。
アイゼンは永久品ではないため、長く使うためにも使用のたびにメンテナンスはしておきましょう。
使用後は水洗いして汚れを落とす
ニッケルクロムモリブデン鋼は鉄よりサビにくいですが、汚れが付着したまま放置するとサビやすく劣化を早めてしまうことに繋がります。
使用後は水洗いして登山中に付着した汚れをしっかり落とします。
サビ防止のためシリコンスプレーかグリースでコーティング
水洗い後にしっかり乾かしたら、サビ防止のためシリコンスプレーでコーティングをします。
シリコンスプレーはホームセンターに売ってるもので十分です。
スキー・スノボー用のサビ止めも使えます。
必要に応じて爪の先端を研ぐ
硬い岩や氷の上を歩くと爪の先端が丸まってくるので、ときどき点検してあげましょう。
先端が丸まってきたら研げば大丈夫です。
爪の先端を研ぐ際もスキー・スノボー用のエッジシャープナーが便利です。
グラインダーなどの使用は厳禁。
研ぐ際は、爪の先端だけを研ぐようにしましょう。
爪の表面を研ぐと薄くなって強度が落ちてしまいます。
湿っぽいところを避けて保管
アイゼンに限らず道具の保管場所では「直射日光の当たらない風通しの良いところ」がよく推奨されています。
しかし、「直射日光の当たらない」ところはあっても、「風通しの良いところ」って自宅内であまりないですよね。
せめて車庫や玄関などの湿度があがりやすいところは避けて保管しましょう。
乾いたクローゼットなどで保管すれば十分です。
アイゼンを使って登山する際の注意点
爪全体を均等に接地するように歩く(フラットフィッティング)
アイゼン装着時は、爪全体が均等に雪面や氷面に接地するように歩くフラットフィッティングが基本です。
通常の歩き方と同じように歩くと、かかとから接地して滑る原因となり危険です。
フラットフッティングを心がけることで、アイゼンの爪全体で地面を捉えることができ安全な歩行ができます。
歩幅は小さく、両足の幅は広く
フラットフィッティングを実行するためにも歩幅は小さく保ちます。
歩幅が大きなってしまうと、接地面が小さくなり、エッジの効きが悪くなってしまいます。
また、アイゼンの爪をズボンの裾に引っ掛ないためにも、両足の幅は肩幅くらいに広げて歩きましょう。
急な斜面に適した歩き方
傾斜がキツくなってくるとフラットフィッティングが難しくなってきます。
登り坂では、つま先を斜面に向けて蹴り込む、キックステップを活用。
下り坂では、かかとから接地して、前足に体重を乗せ、体を後ろに反らさないようにします。
トラバースでは、山側の足は進行方向に向けて、谷側の足は斜度に応じてガニ股に広げます。
山側の足に体重をかけしっかり爪を食い込ませるよう意識しましょう。
一緒に購入したいグリベルのアイゼンケース
グリベルには専用のアイゼンケースがあります。
全体的に頑丈な作りで、爪が刺さっても破れないパッド入り。
開閉部はメッシュ窓付きで、保管にも適しています。
ジッパータブが大きのでグローブをしながらでも操作しやすいです。
グリベルの12本爪アイゼン用ケースなので、当然ながらフィット感は抜群。
収納サイズが大きくて、アイゼンを取り出してもコンパクトにできませんが、安全に携行するためには最も確実な方法です
グリベルG12ニュークラシックはこんな人におすすめ
グリベルG12ニュークラシックは、初めてアイゼンを使用する雪山初心者から経験がある中級者以上におすすめのアイゼンです。
コバがない登山靴にも装着できるので、高価な雪山用の登山靴を購入する必要がありません。
まずは通常の登山靴とG12ニュークラシックで雪山の経験を積み、その後は登山に行く頻度と雪山の難易度によって装備を再検討しからでも遅くはないでしょう。
グリベルG12ニュークラシックのレビューまとめ
グリベルG12ニュークラシックをレビューしました。
雪山の魅力は、雪や氷の上を歩く楽しさと、他の季節では見れない美しい絶景です。
雪山登山といっても難易度の高い山にあえてチャレンジする必要はありません。
自分が楽しいと思える山に登るのが一番。
その際に必要なら雪山用登山靴とワンタッチ式アイゼンを揃えればいいわけです。
実際のところ、ストラップ式のG12ニュークラシックでほとんどの雪山は楽しめます。
グリベルのアイゼンは、耐久性が高く、長い期間にわたり愛用できる信頼性抜群のアイテム。
12本爪アイゼンを探している方にとって、この記事が参考になれば幸いです。