【登山中のクマ対策を解説!】クマに遭遇しないための対策と遭遇時の対処法

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法 登山ノウハウ

こんにちは、つのだです

登山をする上で最も大きい不安要素であるクマとの遭遇

近年は、山中の食料不足などで里に下りてくるクマが多くなり、目撃情報だけでなく襲撃情報をニュースで聞くことも珍しくありません

クマ鈴を身につけている登山者は多いですが、実際にクマに遭遇したときの対処法絶対にしてはいけない行動などは意外と知らない人も多いと思います

ヒグマが日本一多く生息すると言われる知床・羅臼岳に登った際に、現地の人から聞いた内容も踏まえてクマへの対策と遭遇時の対処法をこの記事で解説します

登山中のクマとの遭遇は生死に関わるもの

この記事に書かれていることを知っているか知らないかでリスクは大きく変わります

正しい対処法を知って安全な登山を楽しみましょう!

登山中にクマに遭遇しないための対策

一番はクマに遭わないこと

人間にとってクマは恐ろしい存在ですが、基本的にはクマは人間を避ける習性があります

その習性を前提として、クマに自分の存在を知ってもらうための有効な方法を紹介します

まずはクマ鈴!誰でもできる一番簡単なクマ対策

僕の肌感覚として99%の登山者が身につけているだろうクマ鈴

まずはクマ鈴を鳴らすことで自分の存在をクマに知らせてあげましょう

ただし、クマ鈴はバックパックに付けていると揺れ方によっては響きにくいときもあるので、肉声手拍子を併用すると効果があります

熊鈴には「キーーーン」という高い音が長く響くものと、「カランカラン」という音のものが主にあります

どちらの音もクマ避けには有効なので、あとは好みで選んで構いません

ちなみに僕はいつも単独登山なので、両方の音が鳴る鈴を2つ身につけています

多くの音を鳴らして人が大勢いるよう見せかけます

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法
左が「カランカラン」という音、右が「キーーーン」という音

「クマは鈴の音に慣れきっているので無意味」と熊鈴の効果を疑問視する声もありますが、身につけていることでリスクが大きくなるわけではないので、熊鈴を身につけない理由にはならないでしょう

また「クマ鈴の音が響くことで熊の気配を察知できなくなる」との意見も聞いたことがありますが、気配を察知できなくほどうるさい音ではないと思います

当然ながら、クマ鈴を身につけていれば絶対にクマに遭遇しないわけではありません

しかし、現状、クマ鈴はクマよけ対策として最も有効な手段のひとつとされています

広範囲に音を響かせられるホイッスル

緊急時に自分の居場所を教える道具としても有効なホイッスルですが、クマ対策にも有効です

強風時の稜線上沢沿いクマ鈴の音がかき消されてしまいますが、そのような場所でもしっかり音を響かせてくれます

クマに対してホイッスルを鳴らせば人間の気配をいち早く察知してもらうことが可能

ただし、クマが近距離にいる場合にホイッスルを鳴らすと、その音の大きさからクマが驚いて興奮する可能性があり危険なので注意が必要です

中にコルクが入っているホイッスルは雨などで濡れると音を鳴らせないので、コルク無しのホイッスルを選びましょう

ちなみに僕が使っているのはモルテンのFOX40です

ホイッスルにしては高価ですが、いい音を鳴らしてくれます

肉声や手拍子も有効

クマに自分の存在を知ってもらうために肉声手拍子も有効です

僕が羅臼岳に登ったときも前泊した木下小屋の管理人の方から「九十九折りの登山道でクマとバッタリ遭わないように、曲がる前に手拍子しておいた方がいい」と言われました

何も道具がいらないのでいつでもどこでもできる対策ですが、山ではあまり見かけませんよね笑

この手段の一番のハードルは「恥ずかしさ」かもしれません

日帰り登山日記(北海道、羅臼岳、木下小屋)
羅臼岳の岩尾別登山口にある木下小屋

ラジオや音楽を流しながらの山歩きはオススメしない

ラジオ音楽を流すことでクマよけ対策をする方法もありますが、僕はオススメしません

ラジオや音楽を流すことでクマ対策しようと思ったら音量を上げないと音が響きません

大きな音が絶え間なく流れることでクマの気配を察知できなくなる可能性があります

食料を山に残さない

クマは非常に学習能力の高い動物です

食べカスを残すことで人間が通った後は餌があると学習してしまいます

クマは本来であれば人間を避ける習性がありますが、学習することで積極的に登山道の近くに出没する可能性が高くなってしまいます

北海道知床の羅臼岳のテント場にフードロッカーが設置されていることからも分かるように、クマは人間の食料にも寄ってきます

フードロッカーがない場合は、密封できるジップ付きの袋などに入れて臭いがなるべく漏れないようにします

自分のあとに来る登山者のためにも食べたものはしっかり処理しましょう

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法
羅臼平テント場に設置されているフードロッカー

登山中にクマに遭遇したときの対処法

クマに遭遇したときに最も大切なことは冷静に対処することです

焦らずに一度深呼吸して対処しましょう

遠くにクマがいる場合は静かに様子を見守る

クマとの間に十分な距離がある場合は、静かに様子を見守り、クマが去るのを待ちます

もし近づいてくるようなら、徐々に音や声を出して人間がいることを教えてあげましょう

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法

クマとの距離が50m程度の場合

まず静かに様子を見守ることは変わりません

そしてクマから目を逸らさずにゆっくり後ずさりして木や草むらなどの陰に隠れてクマが去るのを待ちます

もし近づいてくるようなら熊鈴などを少しずつ鳴らしてこちらの存在を教えてあげましょう

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法

クマとの距離が20m程度の場合

20mを切るとクマが興奮して走り出すとあっという間に距離が縮まってしまいます

近距離で下手に音を出すのは危険です

静かに後ずさりして木や草むらなどの陰に隠れ、クマが去るのを待ちます

それと同時にクマ撃退スプレーがある場合は、噴射の準備をしておきましょう

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法

もしクマが襲ってきたら 一番大切な頭と首をバックパックで守る

クマが襲ってきたらもはや逃げ切るのは不可能です

最優先は頭と首を守ること

登山時に担いでいるバックパックで頭と首を覆って防御します

あとはクマが去るのを待つしかありません

クマ撃退スプレーがある場合は、クマの目・鼻・口を狙って噴射します

クマ撃退スプレーの射程距離は5m程度噴射時間は10秒〜20秒程度です

焦って早く噴射してしまうとクマが近づいてきたときには中身が切れてしまいます

怖いと思いますが、クマをなるべく引き付けてから噴射しましょう

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法
羅臼岳登山の際に携行したクマ撃退スプレー

子グマを見かけたら特に注意!親グマもいる可能性大

子グマは親グマと一緒に行動するパターンが多いため、子グマを見かけたら親グマもいると思って特に注意しましょう

親グマは子グマを守ろうと本能的に人間を襲ってくる可能性があるので、単独のクマよりも危険性が高いです

バッタリ遭遇してしまったら最も危険なパターンです

かと言って対処法は変わりませんので、落ち着いて行動しましょう

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法

登山中にクマに遭遇した時に絶対にやっていはいけない行為

畳平バスターミナルからすぐ近くにある乗鞍・魔王岳はクマ頻出地域

大きな音や声を出す

大きな音や声を出すとクマを興奮させかねません

クマが興奮すると生身の人間では到底太刀打ちできない事態を招いてしまいます

通常クマは襲ってくる可能性は低いため、深呼吸して冷静に対処しましょう

クマに奪われた道具を取り返す

クマは興味本位もしくは食料を求めて人間の登山道具を漁ることもあります

クマの習性として、一度手にしたものは「自分の所有物」として認識します

そして、その所有物を取り返そうとする人間を敵だと認識し、襲ってくる危険性があります

福岡大学ワンダーフォーゲル部がヒグマに襲われた原因の一つもクマに奪われたバックパックを取り返したことでした

特にテント場での登山道具の管理は細心の注意を払いましょう

背を向けて走って逃げる

クマは背を向けて逃げるものを追いかける習性があります

それは人間が逃げる場合でも例外ではありません

たとえ獲物や敵と判断しなくても本能的に追いかけてくるので非常に危険です

クマは時速40km以上で走るので人間が走ったところで逃げきるのは不可能

クマに遭遇したら正面を向いたままゆっくり後ずさりしましょう

死んだフリ

クマに遭遇したときの対処法として最も伝統的な対処法だと思います

しかしながら、死んだフリは絶対にNGです

なぜなら、クマは死んだかどうかの確認のために鋭い爪で引っ掻いたりしてきます

その引っ掻き傷が致命傷になりかねません

死んだフリをした結果、死んだと判断した場合は、クマはその死んだ人間を自分のものと認識し、どこかに移動させるかもしれません

とにもかくにもクマに死んだと思われるのは危険です

登山中のクマ対策と遭遇時の対処法

福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ襲撃事件からの教訓

事件の概要

1970年(昭和45年)7月、北海道のカムイエクウチカウシ山福岡大学ワンダーフォーゲル部員5人でテント泊登山をしていたところ、ヒグマに襲われ、3人が犠牲になった事件

教訓① 奪われたバックパックを取り返した

この事件では、最初に遭遇したときにヒグマがバックパックを探り出します

そのとき、部員たちはバックパックを奪われまいと取り返しましたが、それが非常に危険な行為でした

クマは自分の所有物への執着心が非常に強い動物です

一度探り出したものは自分の所有物だと認識し、それを奪おうとする人間は敵だとみなします

ヒグマにバックパックを探り出したら誰もが取り返そうとすると思いますが、この事件では結果的にそれが命取りになってしまいました

教訓② 背を向けて逃げた

他のメンバーが襲われたことで恐ろしくなり背を向けて逃げてしまいました

すでにこの記事で触れていますが、クマは背を向けて逃げるものを本能的に追う習性があります

クマへの恐怖から背を向けて逃げたことでかえって被害が大きくなりました

教訓③ クマが現れたテント場には以前から食料が埋められていた

クマの習性を知らなった学生たちの誤った行動に焦点が当てられていますが、このテント場の利用者は事件の以前から食料の残りを埋めて捨てていたようです

その食料に気づいたクマが出没を繰り返し、「人間がいるなら餌がある」という認識で福岡大学のメンバーたちの前に現れたのかもしれません

やはりクマに遭遇しないための対策のひとつとして、食料の管理は非常に大切です

まとめ クマに遭遇したとき最も重要なのは冷静になること

この記事では登山中のクマよけ対策と遭遇時の対処法について説明しました

言うのは簡単ですが、実際に山で遭遇したら冷静に対処できるのか不安な方も多いと思います

人間は思いがけない場面に遭遇すると頭の中が真っ白になり、普段簡単にできることもできなくなってしまいます

そのためにも遭遇したときを想定して事前にシミュレーションしておきましょう

鈴やホイッスル、クマ撃退スプレーはすぐに触れる位置にあるか?
クマが襲ってきたらバックパックですぐに大事な部分を守れるか?

登山中にクマに遭遇したくはないですが、山にクマがいるのは当然のことです

むしろクマの生息域に人間がわざわざ立ち入ってるようなものです

安全に登山するためにも、そしてクマの生活を乱さないためにも、しっかりクマ対策をして登山を楽しみましょう

乗鞍岳の登山道に設置してあるクマよけ用の鐘
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